13.7.1. グループで行う作業、グループウェア
グループウェアツールのメンテナンスは比較的複雑になる傾向があります。なぜなら、グループウェアツールは複数のツールを統合したもので、時には自分が含まれるディストリビューションとの調和が難しい作業を要求するからです。このため、過去に数多くのグループウェアパッケージが Debian に含まれていたにも関わらず、メンテナの不足や Debian に含まれる他の (新しい) ソフトウェアとの互換性の不足が原因で配布されなくなりました。PHPGroupware、eGroupware、Kolab がこの例です。
そうは言っても、Debian からすべてのグループウェアツールが失われたわけではありません。伝統的に「グループウェア」ソフトウェアが提供していた多くの機能は「標準的な」ソフトウェアに統合されつつあります。この統合により、グループウェアソフトウェアに固有の特殊な要求が減りました。その一方で、グループウェアソフトウェアには専用のサーバが必要です。Citadel (citadel-suite パッケージに含まれます) と Sogo (sogo パッケージに含まれます) は伝統的なグループウェアの代替品で、Debian Stretch に含まれています。
13.7.2. FusionForge を使った共同作業
FusionForge はフリーソフトウェアプロジェクト用のホスティングサービスである SourceForge を起源とする共同開発ツールです。FusionForge はフリーソフトウェアの標準的な開発モデルに基づく総合的な取り組み方を採用しています。FusionForge は SourceForge のコードがプロプライエタリになった後にも進化し続けました。SourceForge コードの最初の作者である VA Software が今後は SourceForge コードのフリーソフトウェア版を公開しないことを決定し、SourceForge の最初のフォークである GForge がプロプライエタリになった後にも FusionForge は進化し続けました。多くの人と組織が FusionForge の開発に参加し続けたため、現在の FusionForge には開発に対する古典的な姿勢を採用する機能および、純粋なソフトウェア開発に該当しないプロジェクトが含まれます。
FusionForge はプロジェクトを管理、追跡、調整するための複数のツールの集合体とみなすことが可能です。これらのツールは大ざっぱに言って 3 種類に分類することが可能です。
連絡ツール。ウェブフォーラム、メーリングリスト管理システム、プロジェクトからのニュースを発表するための告知システムを指します。
追跡ツール。プロジェクトの進行状況を追跡したりタスクの予定を立てるためのツール、バグや機能要求や「チケット」と呼ばれるその他の要素を追跡するためのツール、調査を行うためのツールなどを指します。
共有ツール。プロジェクトに関連する文書の唯一の原本を提供するための文書管理システム、包括的なファイルリリース管理システム、プロジェクト専用のウェブサイトを指します。
FusionForge はさまざまな開発プロジェクト対象にしているため、FusionForge はソースコード管理を担う CVS、Subversion、Git、Bazaar、Darcs、Mercurial、Arch などの多くのツールを統合しています (ソースコード管理は「設定管理」や「バージョン管理」などと呼ばれる場合があります)。ソースコード管理を担うプログラムは登録された全ファイル (多くの場合ソースコードファイル) の履歴をファイルに対して行われたすべての変更と一緒に保存したり、複数の開発者がプロジェクトの同じ部分に対して同時に作業を行った場合にその変更をマージすることが可能です。
きめ細かく調整されたパーミッションシステムを備えたウェブインターフェースと一部のイベントに対する電子メール通知システムを介して、ほとんどのソースコード管理ツールを利用したりさらに管理したりすることが可能です。
残念なことに、Debian Stretch は FusionForge を提供していません。なぜなら、FusionForge は巨大なソフトウェア群であり、適切にメンテナンスすることが難しく、FusionForge から恩恵を受けられるほんの少数のユーザとって Debian 不安定版からパッケージをバックポートすることなど朝飯前だからです。