この章では「基本設定」と呼ばれている内容についてすべてを見直します。具体的に言えば、ネットワーク、言語とロケール、ユーザとグループ、印刷、マウントポイントなどの設定を見直します。
日本語を使ってシステムをインストールした場合、既に日本語がデフォルト言語になっているかもしれません。しかし、インストーラが言語を設定する際にやっていることを知っておくべきです。こうしておくことで、後から必要になった際に言語を切り替えることが可能になります。
ロケールとは地域に関する設定項目全体を指します。ロケールの内容には表示言語だけでなく、番号、日付、時間、通貨の表示書式、アルファベット比較則 (アクセント付き文字を使う言語では適切な設定が必要) が含まれます。各パラメータは独立に設定できますが、通常は同じロケールを使います。こうすることで、広い意味で「地域」に関連するパラメータに一貫性を持たせることが可能になります。ロケールは通常 language-code_COUNTRY-CODE
の書式で表され、文字セットとエンコーディングを表すためにサフィックスを付けられる場合もあります。こうすることで、共通の言語を異なる地域で使う場合の、慣習や書体の違いを考慮することが可能になります。
locales パッケージには、さまざまなアプリケーションの「地域化」を適切に動作させるために必要なすべての要素が含まれます。インストールの最中、locales パッケージはシステムがサポートする言語を選択するよう求めます。システムがサポートする言語を変更するには、root で dpkg-reconfigure locales
を実行してください。
locales パッケージのインストール中、最初の質問でサポートしたい「ロケール」を選択します。すべての英語ロケール (つまり「en_
」で始まるロケール) を有効化するのが合理的です。外国人ユーザがマシンを使う場合、ためらわずに他の言語も有効化してください。システムがサポートするロケールのリストは /etc/locale.gen
ファイルに保存されています。/etc/locale.gen
ファイルを手作業で編集することも可能ですが、変更が終わったら locale-gen
を実行するべきです。locale-gen
は追加されたロケールを動作させるために必要なファイルを生成し、古いファイルを削除します。
2 番目の質問は「システム環境のデフォルトロケール」と銘打たれ、ここでデフォルトロケールを選択します。アメリカ合衆国では「en_US.UTF-8
」を選ぶことを推奨します。イギリス英語話者は「en_GB.UTF-8
」、カナダ人は「en_CA.UTF-8
」またはフランス語の「fr_CA.UTF-8
」のどちらかを好むでしょう。その後、デフォルトロケールを保存する /etc/default/locale
ファイルが修正されます。これ以降、設定されたデフォルトロケールがすべてのユーザセッションに適用されます。なぜなら、PAM が LANG
環境変数内に /etc/default/locale
ファイルの内容を代入するからです。
キーボードレイアウトの管理方法がコンソールとグフラフィカルモードで違っていたとしても、Debian には両方を設定できる単一の設定インターフェースが提供されています。設定インターフェースは debconf に基づいており、keyboard-configuration パッケージに実装されています。キーボードレイアウトをリセットする際には、dpkg-reconfigure keyboard-configuration
を使います。
ここでは、キーボードモデル (日本で使われる一般的な PC キーボードの場合「標準 105 キー (国際) PC」)、キーボードレイアウト (通常「日本語」)、AltGr キーの場所 (「キーボード配置のデフォルト」) について質問されます。最後に「Compose キー」として使うキーが質問されます (「コンポーズキーなし」)。Compose キーはキーストロークを組み合わせて特殊文字を入力する際に使われます。
Compose ' e を入力すると、アクセント付き e「é」が入力できるはずです。キーストロークの組み合わせは
/usr/share/X11/locale/ja_JP.UTF-8/Compose
ファイル (または、
/usr/share/X11/locale/compose.dir
に書かれた現在のロケールに従って定義された別ファイル) に記述されています。
ここで述べたグラフィカルモードのキーボード設定によって影響を受けるのはデフォルトレイアウトだけです。特に GNOME と KDE Plasma 環境では、環境設定の中にキーボードコントロールパネルがあり、これを使うことで各ユーザが固有のキーボードを設定することが可能です。特別なキーの挙動に関する追加的オプションもこのコントロールパネルから設定できます。
UTF-8 エンコーディングのような一般化は、相互運用性の多くの困難を解決できるとして、長く待ち望まれていました。なぜなら、一般化することで、国際交流が簡単になり、文書で使うことのできる文字を好き勝手に制限する必要がなくなるからです。こうすることによる欠点の 1 つが、厳しい移行期間を切り抜けなければいけない点です。移行期間は完全に透過的にできない (つまり、全世界で同時に移行することはできない) ため、2 つの変換操作が必要です。具体的に言えば、ファイル内容とファイル名のエンコーディングを変換する必要があります。幸いなことに、この移行はほとんど完了していますが、参考までに大筋を議論します。
ファイル名だけについて言えば、移行は比較的単純です。convmv
ツール (同名のパッケージに含まれます) はこの目的専用に作られました。従って、これはファイル名をあるエンコーディングから他のエンコーディングに変更します。このツールの使い方は比較的単純ですが、意図しない変換を避けるために 2 段階に分けて行うことを推奨します。以下の例では、ISO-8859-15 でエンコードされたディレクトリ名を含む UTF-8 環境で、convmv
を使ってディレクトリ名をリネームする方法を示しています。
$
ls travail/
Ic?nes ?l?ments graphiques Textes
$
convmv -r -f iso-8859-15 -t utf-8 travail/
Starting a dry run without changes...
mv "travail/�l�ments graphiques" "travail/Éléments graphiques"
mv "travail/Ic�nes" "travail/Icônes"
No changes to your files done. Use --notest to finally rename the files.
$
convmv -r --notest -f iso-8859-15 -t utf-8 travail/
mv "travail/�l�ments graphiques" "travail/Éléments graphiques"
mv "travail/Ic�nes" "travail/Icônes"
Ready!
$
ls travail/
Éléments graphiques Icônes Textes
ファイル内容について言えば、既存のファイルフォーマットにはたくさんの種類があるため、変換手順はさらに複雑になります。いくつかのファイルフォーマットにはエンコーディング情報が含まれているため、そのフォーマットを取り扱うソフトウェアは適切にエンコーディング情報を取り扱うことが可能です。さらにこの場合、ファイルを開いて UTF-8 エンコーディングを指定して再保存するだけ十分です。その他の場合、そのファイルを開く際に元のエンコーディングを指定 (形式に従って ISO-8859-1 や「西欧」、ISO-8859-15 や「西欧 (ユーロ)」など) しなければいけません。
単純なテキストファイルの場合、recode
(同名のパッケージに含まれます) を使えば自動的にエンコーディングを変換できます。このツールは数多くのオプションを備えていますので、いろいろと試してみてください。recode(1) man ページ、recode info ページ (より詳しい) などの文書を調べることもお勧めします。