インストール作業を行うには 128 MB の RAM (ランダムアクセスメモリ) と最低 2 GB のハードドライブの空き領域が必要です。Falcot のすべてのコンピュータはこの基準を満足しています。しかし、これらの数字はグラフィカルデスクトップを含まない、極めて限定されたシステムをインストールする際の最低要件であるということに注意してください。一般的なオフィスデスクトップワークステーション用途では、最低でも 512 MB の RAM と 10 GB のハードドライブの空き領域が推奨されます。
Debian システムは、マシンの BIOS が対応していれば、さまざまな種類のメディアからインストールできます。たとえば、CD-ROM、USB メモリ、さらにネットワーク経由からも起動できます。
4.1.1. CD-ROM/DVD-ROM からのインストール
システムのインストール時に最も広く使われている方法が CD-ROM (DVD-ROM を使っても全く同じです) からインストールする方法です。具体的に言えば、コンピュータは CD-ROM や DVD-ROM から起動され、インストールプログラムが以降の作業を引き継ぎます。
Debian はさまざまな種類の CD-ROM を用意しており、各 CD-ROM は別々の用途向けに設計されています。たとえば netinst (ネットワークインストール) にはインストーラと Debian 基本システムが含まれており、従ってそれ以外のプログラムはダウンロードされます。netinst の「イメージ」はディスクと完全に同じ内容の ISO-9660 ファイルシステムで、そのサイズは 150 から 280 MB 程度です (イメージのサイズはアーキテクチャに依存します)。一方で、完全版にはすべてのパッケージが含まれ、インターネットにアクセスできないコンピュータにシステムをインストールすることが可能です。完全版には 14 枚程度の DVD-ROM が必要です (Blu-ray ディスクの場合は 3 枚です)。公式の完全版 CD-ROM セットはありません (枚数が非常に多かったことがその理由です)。しかしながらプログラムは人気と重要度に基づいてディスクごとに分けられているため、最もよく使われているソフトウェアが含まれている 1 枚目のディスクがあれば、多くの場合に事足ります。
最後のイメージは mini.iso
としても知られており、インストーラの副産物として入手できます。このイメージにはネットワークを設定するために必要な最小限の要素だけが含まれており、その他の要素はすべてダウンロードされます (インストーラの部品もダウンロードします。このため、インストーラの新バージョンがリリースされた時点でこのイメージは使えなくなります)。mini.iso
のイメージは普通の Debian アーカイブミラーの dists/release/main/installer-arch/current/images/netboot/
ディレクトリの下に配置されています。
Debian のインストール用 CD-ROM を作るためには、CD-ROM イメージをダウンロードして、ディスクに書き込む必要があります。Debian インストール用 CD-ROM は購入することも可能で、これはプロジェクトに対する幾ばくかの資金援助になります。DVD-ROM イメージ業者とダウンロード場所のリストがウェブサイトで公開されています。
多くのコンピュータは USB デバイスから起動できるため、USB メモリ (これは単なるフラッシュメモリディスクに過ぎません) から Debian をインストールすることも可能です。
インストールマニュアルでは debian-installer
を含む USB メモリを作成する方法が説明されています。USB メモリの作成手順は極めて単純です。なぜなら、i386 と amd64 アーキテクチャ用の ISO イメージは CD-ROM からだけでなく USB メモリからも起動できるハイブリッドイメージになっているからです。
最初に USB メモリのデバイス名を確認しなければいけません (たとえば /dev/sdb
です)。これを行う最も簡単な方法が dmesg
コマンドを使ってカーネルの出したメッセージを確認する方法です。次に前もってダウンロードしておいた ISO イメージ (たとえば debian-9.0.0-amd64-netinst.iso) を cat debian-9.0.0-amd64-netinst.iso >/dev/sdb; sync
というコマンドを実行してコピーしなければいけません。このコマンドは USB メモリに直接アクセスし、無差別に内容を削除するため、実行には管理者権限が必要です。
より詳しい説明はインストールマニュアルに書いてあります。インストールマニュアルの中で特に注目すべき箇所は、より複雑な手順で USB メモリを準備する方法です。この方法を使うことで、インストーラのデフォルトオプションを (カーネルコマンドラインを使い) カスタマイズすることが可能です。
4.1.3. ネットワークブート経由のインストール
多くの BIOS では、カーネルと最低限のファイルシステムイメージをダウンロードすることでネットワークからカーネルを直接起動できるようになっています。
PXE や
TFTP ブートなどと呼ばれるこの方法は CD-ROM ドライブを持たないコンピュータやメディアからの起動をサポートしていない BIOS を備えたコンピュータにインストールを行う場合の救世主になります。
ネットワークブート経由のインストール方法は 2 段階で行われます。最初に、コンピュータ起動中に BIOS (またはネットワークカード) が自動的に IP アドレスを取得するために BOOTP/DHCP 要求を出します。BOOTP または DHCP サーバがこれに応答し、ファイル名とネットワーク設定を返します。ネットワークの設定が終了した後、クライアントコンピュータは先に返されたファイル名のファイルを取得するために TFTP (Trivial File Transfer Protocol) 要求を出します。ファイルの取得が終わったら、ファイルをあたかもブートローダであるかのごとく実行します。そしてブートローダが Debian インストールプログラムを起動し、インストーラがハードドライブ、CD-ROM、USB メモリから起動したのと同様に実行されます。
ネットブート経由のインストール方法に関するすべての詳しい情報はインストールガイド (「TFTP ネットブート用ファイルの準備」の節) に書かれています。